転職活動や就職活動で、自己PRや志望動機を書くときに欠かせないのが「業界研究」。とはいえ、業界の構造やトレンド、主要企業など、情報が膨大すぎてどこから手をつければいいか分からない──そんな声をよく耳にします。
実際、私も転職活動で複数の業界を視野に入れていたとき、「この業界ってどういう仕組みで動いてるの?」「競合はどこ?」「今どんな流れにあるの?」と、いちいち検索して回るのが正直しんどいと感じていました。
そんなときに使えるのが、ChatGPTを使った業界分析のショートカット。情報を1から探すのではなく、「どのように聞くか」を工夫することで、業界の全体像を短時間でつかむことができます。
本記事では、ChatGPTに投げかけるプロンプトを工夫しながら、主要プレイヤーやトレンド、業界の構造・課題、自分との接点、志望動機への落とし込みまで──段階的に業界分析を深める実践例を紹介します。
業界を“理解した気になる”のではなく、“言語化できる理解”に変えるために。ChatGPTを活用して、効率よく・深く・自分らしく分析を進めてみませんか?

ChatGPTで業界分析をスマートに!プロンプト設計で見える市場の全体像
業界研究というと、「企業のIR情報を読まないと…」「日経新聞をチェックして…」というように、時間も手間もかかるイメージがありませんか?私も以前は、いきなり分厚い業界地図に手を伸ばしては挫折していました。
でも実際のところ、業界分析の第一歩は「ざっくりと全体像をつかむこと」。この段階では、ChatGPTが非常に頼りになります。
なぜなら、ChatGPTは質問の仕方さえ工夫すれば、その業界の構造・主なプレイヤー・動向・課題などを網羅的に整理して提示してくれるからです。
ChatGPTで業界分析する“3つのメリット”
- 時間短縮:ネット検索を繰り返すより、短時間で情報の全体像が得られる
- 検索漏れ防止:盲点になりがちな視点やプレイヤーも含めて一覧化してくれる
- 初心者視点:前提知識がなくても、初学者向けにかみ砕いて説明してくれる
ただし、重要なのは「丸投げ」ではなく、“何を調べたいのか”を明確にして指示を出すこと。
たとえば、以下のように聞くことで、業界のアウトラインを効率よく引き出せます:
物流業界について、以下の観点から整理してください。
・主な業態の分類(例:宅配、倉庫、国際輸送など)
・代表的な企業とシェア
・現在注目されているトレンドや社会的背景
・課題と今後の見通し
「物流業界は大きく宅配・倉庫・BtoB輸送・国際輸送などに分かれます。主要企業としてはヤマト運輸、日本通運、佐川急便などがあり…(以下略)」
このように、構造的な問いを立てることで、ChatGPTの出力も構造的になります。
企業のWebサイトやIR資料、業界地図を読み込む前に、ChatGPTで「全体像の地図」を手に入れておくことで、後から入ってくる情報が整理されやすくなり、理解が一段と深まります。
競合はどこ?業界の主なプレイヤーを調べる
業界の全体像をつかんだら、次に知っておきたいのが「その業界で活躍している主要な企業」です。業界内でどんなプレイヤーがいるのかを把握することで、志望企業の立ち位置や特徴も見えてきます。
ChatGPTを使えば、検索を繰り返すことなく、1回のプロンプトで主要企業を一覧化することができます。
プロンプト例:主要プレイヤーを網羅的に把握
日本の物流業界における主要な企業を、業態別に分類して一覧にしてください。
それぞれの企業の特徴や強み、代表的なサービス、顧客層も簡単に加えてください。
【宅配】
・ヤマト運輸:宅急便ブランドで個人宅配に強み。再配達削減の取り組みや冷蔵・冷凍配送も充実。
・佐川急便:法人向け宅配に特化。大量発送やBtoB対応力が強く、業務効率性を重視。【総合物流・ロジスティクス】
・日立物流:倉庫・輸配送からIT連携まで一貫対応。製造業や流通業を中心に取引多数。
・セイノーホールディングス:路線便輸送とグループ連携によるネットワーク型物流が強み。【国際物流・フォワーディング】
・日本通運(日通):世界700拠点超の国際ネットワークを持ち、陸海空すべてのモードに対応。
・近鉄エクスプレス:航空貨物に特化し、精密機器・医薬品など高付加価値品輸送に実績あり。【新興・テック系】
・Hacobu(ハコブ):物流DXに特化。動態管理や共同配送プラットフォーム「MOVO」を展開。
・オープンロジ:EC物流を支援するSaaS型プラットフォームを提供、中小ECに人気。
このように、単なる社名だけでなく業態・強み・サービス内容・顧客層まで把握できるのが、ChatGPTの出力を活用する大きな利点です。
ポジショニング理解にも役立つ
主要プレイヤーを知ることで、志望企業が「業界の中でどんなポジションにあるか」がわかります。たとえば:
- 「この会社は新興企業だけど、テクノロジーで攻めている」
- 「老舗だけどBtoCよりBtoBに強みを持っている」
- 「グローバル展開が進んでいるが、国内では競合が強い」
これらの視点は、企業比較や志望理由を組み立てるときにとても重要です。ChatGPTで「競合との違い」まで聞いておくと、より具体的な志望動機づくりにつながります。
A社とB社は物流業界の中でどのような違いがありますか?
それぞれの特徴と強み・弱みを比較してください。
ChatGPTの回答は一例に過ぎませんが、比較視点を得ることで、あなた自身の視点も育っていきます。
業界トレンドを効率的にキャッチする
業界を理解するうえで欠かせないのが、「今、何が注目されているのか」という視点です。業界の構造やプレイヤーを知るだけでは不十分で、「今どんな変化が起きているのか」を把握してこそ、深い理解につながります。
とはいえ、ニュースサイトや専門誌をすべて読むのは非現実的です。そこで役立つのが、ChatGPTに「最近のトレンドを整理してもらう」使い方です。
プロンプト例:業界の変化を把握する
物流業界における最近の注目トピックや業界トレンドを、5つに絞って簡潔に解説してください。
可能であれば社会背景や企業の対応動向も含めてください。
1. 労働力不足と2024年問題:ドライバーの高齢化や規制強化による供給力不足が深刻に。各社は自動化やDX投資を強化中。
2. ラストワンマイルの効率化:再配達削減や置き配・宅配ボックス活用が進展。
3. 環境対応・脱炭素:EV配送車の導入、モーダルシフトなど。
4. EC市場拡大への対応:物流需要の急増に倉庫自動化で応戦。
5. 物流×IT:在庫最適化や配送ルート最適化など、AI活用が広がる。
このように、トレンド情報をテーマごとに整理してくれるので、業界の動きが一目でつかめます。
「背景」や「変化の方向性」まで押さえる
さらに、ChatGPTには単なる事実列挙だけでなく、「なぜそれが起きているのか」「今後どうなりそうか」まで尋ねると、より深い洞察を得ることができます。
物流業界で脱炭素が注目されている背景と、企業の具体的な取り組み事例を教えてください。
「政府の2050年カーボンニュートラル政策に加え、荷主企業のESG重視が背景にあります。ヤマト運輸ではEV車両の導入を拡大中、日本通運は鉄道・船舶へのモーダルシフトを進めています。」
「トレンド=一時的な流行」ではなく、「構造変化の兆し」として捉えることで、志望理由の説得力も高まります。
自分なりに気になるトピックを掘り下げたり、「この流れに自分はどう関われるか?」と考えてみることで、業界理解が“自分ゴト化”されていきます。
ChatGPTと対話しながら“志望動機に使える理解”へ
業界の構造やトレンドを把握できたら、次のステップは「自分との接点を見つけて、志望動機に活かすこと」です。
ChatGPTは情報整理だけでなく、思考のパートナーとしても非常に有効です。特に、自分の経験や価値観と業界の特徴をつなげる場面では、“対話”によって気づきが引き出されることがあります。
プロンプト例:「なぜこの業界に興味があるのか」を整理
物流業界に興味を持った理由を整理したいです。
以下の2点をもとに、簡潔にまとめてください。
・学生時代にアルバイトで物流倉庫の作業を経験し、裏方の仕事の面白さを感じた
・社会のインフラを支える仕事として、使命感を持てそうだと感じた
「私は学生時代に物流倉庫でのアルバイトを経験し、現場での効率的な連携や工夫に面白さを感じました。また、物流は社会インフラとしての重要性が高く、人々の暮らしを支える実感を得られる点にも魅力を感じています。」
このように、自分の経験+業界の特徴を組み合わせることで、“自分なりの志望理由”が自然と浮かび上がってきます。
プロンプト例:「この業界で活かせそうな自分の強み」を探す
物流業界の仕事において、以下のような性格や経験・スキルがどのように活かせるか教えてください。
・慎重で計画的
・人と連携するのが得意
・Excelを使った在庫管理のアルバイト経験がある
・地道な作業をコツコツ継続できる
「慎重で計画的な性格は、遅延やミスを防ぐうえで物流現場では重要です。
人と連携する力は、多部門や現場スタッフと協力する業務で活きます。
Excelを使った在庫管理の経験は、デジタル化が進む中で即戦力になりますし、
コツコツ継続する力は、繰り返しの工程が多い現場でも評価されます。」
このように、性格的な強みに加えて、過去の経験やスキルをセットで伝えることで、より具体性と説得力のあるアピールにつながります。
違和感があれば、ChatGPTに相談してみる
出てきた志望理由や強みの表現に「しっくりこないな」と感じたら、それもChatGPTに投げかけてみましょう。
この志望動機、少し説教くさく聞こえないでしょうか?
もう少し自然な語り口に変えてください。
「物流業界の現場で働いた経験が、自分にとってすごく面白かったんです。裏方だけど、全体を動かしている感覚があって。そういうところに魅力を感じて、もっと関わりたいと思うようになりました。」
「ChatGPTに添削してもらう → 自分の言葉で語り直す」という対話的な流れを作ることで、志望動機がどんどん“自分らしい”ものに仕上がっていきます。
業界別:深掘りプロンプト例と出力イメージ
ここでは、ChatGPTで業界分析を行う際の実践的なプロンプトと出力例を、3つの代表的な業界について詳しく紹介します。構造・トレンド・課題から、自分との接点を探る問いまで、段階的に深掘りできる例になっています。
IT業界
日本のIT業界を構造的に把握したいです。
SaaS、SIer、Webサービス、インフラの分類、代表企業、ビジネスモデルの違い、現状の課題と成長領域を整理してください。
「IT業界は大きく以下の4つに分類されます。
【SaaS】Slack、freee:クラウド型のソフトウェア提供。
【SIer】NTTデータ、富士通:企業向けにシステム開発を請け負う。
【Webサービス】楽天、リクルート:一般消費者向けにサービスを提供。
【インフラ】IIJ、さくらインターネット:ネットワーク・サーバー基盤の提供。
成長領域はAI、セキュリティ、クラウド。課題は人材不足と旧来型システムの脱却です。」
この業界で自分が活かせる点を探したいです。
・大学でプログラミングを学んだ
・課題解決型の思考が得意
この2点を活かせる職種やフィールドを教えてください。
「システム開発やプロダクト設計に向いています。技術的な素養を持ちながら課題設定・解決ができる人材は、SaaS企業やSIerで高く評価されます。」
物流業界
日本の物流業界の業態分類、主なプレイヤー、現在の社会課題(2024年問題など)、業界の変革方向を整理してください。
「業態は宅配・倉庫・国際物流・ロジスティクスに分類。
ヤマト運輸、日通、佐川急便、近鉄エクスプレスなどが主要企業。
2024年問題(ドライバーの時間規制強化)や脱炭素化対応が急務。
AIや自動化、モーダルシフト、置き配など“効率化”と“環境対応”がキーワードです。」
物流業界に関心があるのですが、次のような経験をどのように志望理由につなげればよいか教えてください。
・倉庫作業のアルバイト経験がある
・裏方の工夫や改善が好き
「現場経験から“見えないところを整える力”に関心があることを強調できます。物流の現場改善やロジスティクス最適化への興味につなげ、社会インフラとして支えるやりがいを主張すると効果的です。」
商社業界
商社業界の構造(総合商社と専門商社の違い)、ビジネスモデル、プレイヤー、現在注目されている動き(投資戦略・サステナビリティ対応など)を教えてください。
「総合商社(例:三菱商事・伊藤忠)は多分野で資源・事業投資・貿易を展開。専門商社(例:長瀬産業・双日)は特定業界に特化した商材取引や機能提供が強み。
現在は資源価格高騰や地政学リスク、脱炭素投資への対応が注目テーマ。
単なる仲介から“事業経営型”へと進化しています。」
グローバルに働きたいという気持ちと、異文化調整が得意という特性を活かして、商社業界にどう関心を持ったのか整理したいです。
「商社はグローバルな取引や現地交渉の場面が多く、“異文化で調整する力”が重宝されます。多様な立場をつなぐ調整役としての志向は、事業開発や海外駐在に向いています。」
このように、業界構造やトレンドだけでなく、「自分との接点」を発見する問いをChatGPTに投げかけることで、業界理解が一気に深まります。
まとめ:ChatGPTで“業界を言語化する力”を育てる
本記事では、ChatGPTを活用して業界分析を行うためのプロンプト設計と活用例を紹介してきました。
業界研究は、単なる情報収集ではなく「構造や背景を理解し、自分との接点を言語化する」ことがゴールです。ChatGPTはそのプロセスを効率化するだけでなく、思考を深めるパートナーにもなります。
最後に、業界分析×ChatGPT活用のポイントをまとめます:
- 業界の全体像は「構造・プレイヤー・課題・トレンド」などを分解して整理
- プロンプトは目的に応じて具体的に:「一覧にして」「比較して」「背景も含めて」
- 志望動機につなげるには「自分の経験・価値観」と業界の特徴を対話的に紐づける
- 強みを見つけるには性格だけでなく経験・スキルベースの棚卸しも活用
- 出力結果はあくまで素材。声に出して読み、自分の言葉に直してこそ意味がある
ChatGPTを通じて、“業界を理解した気になる”から、“業界について語れる自分になる”へ。
構造的に理解し、主観と客観を行き来しながら、自分らしい志望動機を形にする。そんな業界分析の進め方を、ぜひ今日から試してみてください。
コメント